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ある住宅会社の社長が、自社の社員に事実上「新型コロナワクチンを接種したら出勤不可」とする旨通達したと週刊誌に報じられました。「ワクチンを接種したら5年後に死ぬ」「5Gが新型コロナ感染を引き寄せる」などの発言も伝えられています。当の社長は大真面目だったようで、会社を存続させ、社員を守るために必死だったのかも知れません。ですが「5年後に死ぬ」ことがわかっていて国家としてワクチンを承認することはあり得ません。5Gも周波数帯が国によって違うのに、5Gと一括りにすることそのものが非科学的です。
この例にも見られるように、一旦デマを信じてしまうと、それに囚われてしまい、他人に対しても悪気なく、誤った情報に基づいた行動を促すことがしばしば起こります。新型コロナワクチンに関するデマは、世界中で広がっています。
いくつか報告されている、新型コロナワクチンに関係するデマの例を挙げておきます。以下の情報は、公に否定されています。根拠のないデタラメと言えるものです。
これらのデマのいくつかは、新型コロナワクチンへの不安をあおり立てることで、「反ワクチンセミナー」を開催したり、ビタミン剤やら消毒薬を売るといった、ビジネスにつなげようとする人が意図的に流布しているものもあるようです。
ワクチンがまだ接種できる状況になかったときには、「お湯を飲むとウイルスが死滅する」「トイレットペーパーがなくなる」といったデマも横行しました。
デマは、不安と結びついています。新型コロナウイルスは、世界中で多数の死者を出し、皆が不安になりました。けれども人はウイルスを肉眼で見ることはできませんし、新型コロナワクチンも、過去に接種した経験がありません。何か自分に(あるいはもっと一般的なレベルで)悪いことが起こりはしないか、と不安になります。1940年代の研究になりますが、心理学者のオルポートとポストマンは「デマの心理学」という著書で、デマの拡散は、問題の重要性と状況の曖昧さの積に比例すると書いています。新型コロナウイルスの感染爆発という、場合によっては命に関わる重大さと、ワクチンの効果という医学知識を必要とするもの(理解できなければ曖昧さは大きい)の掛け合わせは、デマが拡散しやすい条件を満たしていると言えるかも知れません。大きな不安に対する答えとして「マイクロチップが埋め込まれていて、行動監視される」「女性は不妊になる」「5年後に死んでしまう」といった「感情に訴えかけるより大きなご託宣」を望む心理が働くのではないかと考えられます。
SNSなどから、新型コロナワクチン接種に関して、不安をかきたてる情報を目にしたときは、「そうであるに違いない」と飛びついてしまう前に、それがどこから来ている情報かを調べてみましょう。厚生労働省や、地方自治体などのサイトに出ていれば確からしい情報ですし、場合によってはデマとして紹介されているかも知れません。
「この情報を伝えたほうが良さそうだ」と感じた時には、「その情報がもし本当なら伝えた方が良さそうだ」と、一呼吸おきましょう。その段階で、本当かどうかわからなければ、拡散すべきではないし、また情報が正しいと思い込まないようにすべきです。
新型コロナワクチンに限らず、自分が不安であることを認識することで、状況に対応しやすくなります。つまり、災害やウィルスの感染爆発のような世の中が不安になるような状況下では、刺激的な情報に飛びつきやすいということを自覚して、いつもより慎重に、もしくは情報を疑ってみるということを実践するとよいと思われます。
【参考記事】