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卵巣嚢腫

概要

卵巣嚢腫(のう腫)とは、卵巣に生じる良性腫瘍です。「卵巣嚢胞」と呼ばれることもあります。卵巣腫瘍の80%~90%は卵巣嚢腫であると考えられており、液状の内容物が入った袋のような形状をした腫瘍です。内容物によってさまざまな種類に分けられます。主な種類として、以下の4つがあります。

袋状の病変の内部に皮膚や毛髪、歯などの組織が内容物になっている腫瘍です。卵巣腫瘍全体の15~25%を占め、20代~30代の女性に最も多くあらわれる卵巣嚢腫の一種です。また、再発率が高いことも特徴です。

子宮内膜症(子宮内膜が本来あるべき子宮以外の場所に発生してしまう病気)を原因とする疾患です。卵巣の中に子宮内膜が増殖し、病巣が袋状の嚢胞を作って、その中に古い血液がたまって起こります。また確率は低いですが、がん化する可能性があり、症状として激しい月経痛を伴います。

さらさらとした水のような、黄色っぽい液体が内容物になっている良性の腫瘍です。20~30代の女性に起こりやすく、卵巣腫瘍全体の15~25%を占める疾患でもあります。

ネバネバしたゼラチン状の粘液が内容物になっている良性の腫瘍です。嚢腫内がいくつかの部屋に分かれている多房性の場合が多く、閉経後の女性に多い疾患です。卵巣腫瘍全体の5~30%を占め、大きさが30㎝を超えるまでに成長することもあります。

原因

原因ははっきりと分かっていません。

ただ、卵巣はホルモンを分泌し、毎月排卵するため、細胞分裂が盛んに行われている臓器です。そのため卵巣は腫瘍が多発しやすい場所の一つとされています。

症状

一般的に症状が無いことが特徴です。ただし、卵巣嚢腫が大きく成長することで腹部の圧迫や、卵巣がねじれたり、腫瘍が破けたりすることで腹痛が現れることがあります。特に卵巣嚢腫の一種である皮様嚢腫では、卵巣全体がねじれる卵巣嚢腫茎捻転(らんそうのうしゅけいねんてん)があります。これが起こると強い腹部の痛みを伴うため、救急での治療を行う場合も多いです。嚢胞がある程度の大きさになると、下腹部の圧迫感や腹部が張るようなな違和感、腰痛や頻尿、便秘などのさまざまな症状に気づく場合もあります。

検査・診断

  1. 内診 医師が膣内に指を入れて卵巣の大きさ・形・癒着の有無・腫れなどを確認します。ただし、ある程度の大きさにならないと診断しにくいため、超音波検査やMRI・CTがより正確に診断できます。
  2. 超音波検査経腟 超音波検査(腟内に棒状の超音波プローブ器具を挿入し、反射波の情報を画像化する検査)、または経腹超音波(腹部に専用のゼリーを塗布し、腹部外からプローブをあてる超音波検査)で、卵巣嚢腫の大きさと状態を調べます。
  3. MRI・CT 卵巣嚢腫内の構造をより詳しく見るための画像診断です。卵巣嚢腫の種類や、良性・悪性の予測を行います。
  4. 腫瘍マーカー(血液検査) MRI・CTと同様に、卵巣嚢腫の種類や良性・悪性の予測を行います。

なお、可能性は低いですが腫瘍が悪性の場合もあります。そのため、悪性の可能性が考えられる場合には、手術で取り出した腫瘍の性質を調べる術中迅速病理診断(手術の際に細胞や組織の一部を採取し、腫瘍が悪性か良性かなどを判断する診断)を行う場合もあります。

治療

検査で卵巣嚢腫が見つかっても、良性で症状が無い場合は治療をしないこともあります。その場合は定期検診にて腫瘍の大きさや状態の経過観察を行います。

治療が必要と判断された場合は、手術療法があります。症状や今後の妊娠・出産の希望、腫瘍の大きさ・種類、年齢に適した治療を行います。特にチョコレート嚢胞の場合には、薬物療法や手術療法を積極的に検討します。茎捻転の心配が強い場合や、嚢胞の成長ペースが速い場合には、手術を検討します。一般的に、良性腫瘍を治療できる薬物療法はありません。

また悪性腫瘍が疑われる場合には、精密検査後、詳細な治療方法を検討・説明します。一般的には、両側卵巣及び子宮を含めた開腹手術で腫瘍を摘出します。摘出した腫瘍を顕微鏡で診断する病理検査の結果から、追加治療(抗がん剤など)の必要性を判断します。

予防・診療後の注意

卵巣嚢腫は再発する可能性がある疾患です。特にチョコレート嚢胞の術後、もしくは無治療の場合には、約30%の方が再発すると考えられます。チョコレート嚢胞の再発を可能な限り防ぐためには、ピルの服用が有効です。また再発した場合には、腹腔鏡下手術によって腫瘍を摘出する場合が多いです。

気づかない間に卵巣嚢腫が大きく成長してしまうと、卵巣を全摘出しなければならない場合もあります。予防と早期発見のために定期的に超音波検査を受けることが有効です。

参考・引用

卵巣嚢腫について | メディカルノート (medicalnote.jp)

卵巣嚢腫 – 卵巣嚢腫の種類・症状・治療法(手術) | 婦人科info (fujinkainfo.jp)

『卵巣嚢腫』とは?症状や治療法、放置した場合の危険性を詳しく解説 | ページ 2 / 2 | 赤ちゃんが欲しい(あかほし)妊活webマガジン (akahoshi.net)