ワクチンを筋肉注射で受けたあと、肩の強い痛みや肩の可動域制限が起こることがあります。
通常は数日〜1週間程度で治るとされていますが、2週間以上経っても症状が続く場合にはワクチン接種後の肩関節障害としてSIRVA(シルバ)の可能性が考えられます
1. SIRVAとは
2. なぜSIRVAが起こるの?
3. 痛みの原因「モヤモヤ血管」とは
4. 治療法
5. 診療について
SIRVAは “Shoulder Injury Related to Vaccine Administration” の略で、ワクチン接種後に生じる肩の急性炎症を意味します。
主な症状には以下のようなものがあります。
これらの症状は、四十肩や五十肩と呼ばれる肩関節周囲炎に似た状態です。SIRVAの痛みは3ヶ月以上持続し、慢性疼痛に移行することがあり、進行すると関節周囲の組織が癒着し、長期的な可動域制限につながる可能性があります。
SIRVAの主な原因は、ワクチン接種時の注射手技により三角筋(肩の筋肉)の深い部位にある「滑液包」にワクチンが不注入されたことで炎症が起き、肩関節周囲に痛みや可動域制限が生じると考えられています。
医療ミスだと考える方もいらっしゃいますが、個人や年齢により解剖学的構造が異なるため、ワクチンの注入部位および深度を証明することはむずかしく、注射手技の巧拙に関わらず生じる可能性があります。
モヤモヤ血管は、痛みの原因部位に生じる異常な新生血管のことを指します。 炎症や修復過程で不自然に増殖し、いびつな構造でボヤっとかすんだように見えるためモヤモヤ血管と呼ばれています。モヤモヤ血管の近くには異常な神経も同時に増殖し、これが痛み信号を伝えます。
SIRVAの場合、ワクチン接種による炎症反応がモヤモヤ血管の形成を促進し、長引く痛みの原因となる可能性があります。
SIRVAの治療には以下のようなものがあります。
早期の治療介入が重要で、適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。
SIRVAは比較的新しい概念であり、医療機関での認知度がまだ低い場合があります。また、SIRVAに対する治療は現在日本では自由診療で行われているケースがほとんどです。
ワクチン接種後に長引く肩の痛みや可動域制限を感じた場合は、SIRVAの可能性を考慮し、整形外科を受診し相談することが重要です。適切な診断と治療により、多くの患者さんが症状の改善を経験しています。