HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)とは、子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスの感染を予防するためのワクチンです。子宮頸がんは、撲滅できるがんであり、そのために最も有効な手段が、HPVワクチンです。HPVワクチンの接種は、国が定める予防接種法にもとづく定期接種(一定の対象年齢に達した人が接種を受けることを努力義務とするもの)の1つで、公費負担により無料で受けることができます。HPVワクチン接種により、子宮頸がんによる死亡リスクを大幅に軽減することができます。
HPVウイルスは子宮頸がんの他にも中咽頭がん、肛門がん、膣がん、外陰がん、陰茎がんなどの発症に関連します。また、尖圭コンジローマの原因にもなります。妊娠中、分娩時は胎児にHPVウイルス感染症が感染してしまう可能性もあり注意が必要です。
子宮頸がんをはじめとする感染症にかかること、そして子宮頸がんなどによって死亡するリスクを減らす為、対象年齢になったらHPVワクチンを接種することを推奨します。
HPVワクチン定期接種の対象年齢は、小学6年生〜高校1年生です。
HPVウイルスは主に性交渉によって感染します。感染しやすいウイルスであり、性交経験のある女性の多くが感染しています。そのため、性交経験のないうちにHPVワクチンを受けておくことが理想です。
冒頭でも記載していますが、HPVウイルスが原因となる代表的な病気は子宮頸がんです。日本では年間約1万人が子宮頸がんにかかり、約2800人の死者がでています。 HPVウイルスには様々な遺伝子型があり、そのうち子宮頸がんを発症するリスクが最も高いウイルス型が2つ存在します。この2つの型は子宮頸がんの原因の50~70%を占めるとされています。この2つの型に対し予防効果があるワクチンを、2価ワクチンといいます。それに加え、尖圭コンジローマなどの性病を引き起こす2つの型にも有効なワクチンを4価ワクチンといいます。現在定期接種の対象(無料で接種が可能)となっているワクチンはこの2種類です。
HPVワクチンは初回から2ヶ月おいて2回目、そして3回目を2回目から4ヶ月後に行います。合計6ヶ月間で完了します。定期接種の対象となる高校1年生(16歳)は、年度末の3月31日までに3回目の接種を終える必要があるため、高校1年生の9月が初回接種のラストチャンスです。その後は任意接種(有料での接種)となります。
2013年4月から定期接種が開始されたHPVワクチンですが、副作用についてワクチン接種との因果関係を否定出来ないとされたことから、2013年6月より積極勧奨を中止されていました。
これに対し、2015年に世界保健機関(WHO)は「若い女性をHPVによるがんの危険にさらしている」との非難声明を出しました。
その後日本では、HPVワクチンについて議論され続け、2021年11月にHPVワクチンが他の定期接種のワクチンと比較して安全性が低いわけではないと判断されました。これにより2021年4月から定期接種の積極勧奨を再開することとなりました。 HPVワクチンの積極勧奨を控えていた1997年生まれから2005年生まれの人は、接種する機会を逃してしまい、本来であれば現在接種を希望する際は任意接種(有料での接種)となります。 しかし、2022年4月より定期接種の対象者だった年代に対し、無料でHPVワクチンが接種できることになりました。これをキャッチアップ接種と呼んでいます。キャッチアップ接種は2025年3月までの制度です。今度こそ接種できる機会を逃さないよう、早めの接種をお勧めします。
HPVワクチンの接種に加えて、定期的な子宮頸がん検診も必要です。HPVワクチンを接種した場合でも、すでに感染している際はその治療の効果があるわけではありません。またHPVウイルスの遺伝子型は非常に多様なため、子宮頸がんになりうる高リスクの型に対して予防効果はありますが、すべての型に対して完全な効果があるわけではないのです。
できる限りの予防策をとり、自分自身の体を守りましょう。
ゼロマチクリニック天神では、女性の健康的な社会生活のためにHPVワクチンの接種、子宮頸がん検診に取り組んでいます。学校等でのHPVワクチン集団接種、講演等お気軽にご相談ください。