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不整脈

概要

心臓の拍動(心拍)のリズムが乱れた状態にあることを不整脈と言います。これは、健康な人でも起こり得るもので、加齢やストレス、睡眠不足などで起こります。また、動悸などの自覚症状がある場合も、全く無自覚なものもあります。不整脈には死に至るものもあります。治療のいらない不整脈なのかそうでないかの見極めは専門医の診断が必要です。めまい、息切れ、意識の消失などがある場合は、早めの受診が大事です。

不整脈の種類と症状

不整脈は、大きく3つに分類されます。

① 期外収縮不整脈 (脈が飛ぶ、抜ける)

症状は、どきんとする、一瞬胸の違和感を覚える、息苦しい、などがあり無症状の場合もあります。
心臓は、電気刺激によって脈を発生させますが、その電気刺激が本来生じるところ以外から発生することによって脈が抜けたり飛んだりする単発性の不整脈です。若くて健康な人でも、アルコールの摂取や喫煙、過労などで生じる場合があります。患者数の最も多い不整脈は、経過観察ですむ場合が多いですが、症状が強かったり頻度が多い場合には、薬剤やカテーテルによる治療の対象となります。

② 頻脈性不整脈(心拍数が早くなる)

脈拍が1分間に100回以上になるものを頻脈と言います。運動中の頻脈などは問題にはなりませんが、脈拍が増えることで、心臓のポンプとしての機能が低下して、全身に血液がうまく運べなくなる場合には治療が必要です。頻脈にはさらにいくつかのタイプがあります。代表的なものは次の通りです。

洞性頻脈
心臓の電気を発生させる場所(胴結節)からの刺激の回数が多くなるものです。運動中や、飲酒など、日常生活で頻脈が起きる場合もこれに相当します。脱水、発熱、感染症など、洞性頻脈が起こる原因は多岐にわたります。

・発作性上室心拍
突心房と心室の間で電気信号がぐるぐる廻りをはじめることによって起こる頻脈です。突発的に心拍数が増え、しばらくすると突然消失する場合がこれに相当します。頻脈を自覚して医療機関に出向いても、その間に心拍が正常に戻ってしまうことが起こりがちなので、24時間装着するホルター心電図によって診断することができます。また、カテーテルアブレーションと呼ばれる根治治療を受けることができます。

心房細動
異常な電気信号により拍動のリズムが崩れます。脈は速くなったり遅くなったり不規則になります。ポンプの機能が低下し、心臓内での血液がよどんで血栓(血の塊)ができやすくなります。心臓から運ばれた血栓が脳に到達して血管を詰まらせると脳血栓になり、介護が必要になるなど、日常生活に重大な影響を及ぼすこともあります。脳血栓によって死に至ることがあるにもかかわらず、その基となる心房細動は無症状の場合もあるため、健康診断などでのチェックが重要です。

・心房粗動
心房粗動は、心房細動と同様、心臓のポンプとしての機能を低下させます。心房細動による脈が不規則になるのに対して、心房粗動は規則正しく脈を刻むのが特徴です。心房粗動もまた、血栓ができやすく、脳血栓を引き起こす可能性があるため、血液を凝固させない薬などの投与を行います。心房粗動にはカテーテルアブレーションが有効とされています。

③ 徐脈性不整脈 (心拍数が遅くなる)

心拍数が毎分50回以下になる場合は、徐脈と呼ばれます。心臓の中で電気刺激が発生しなくなったり、伝達が不十分になることで起こります。症状としては動作時の息切れやめまいがあります。失神することもあります。

検査・診断

不整脈の診断は、心電図の波形からそのパターンを読みとることで行われます。心電図の最も一般的なものは、安静時12誘導心電図検査です。クリニックや病院でベッドに横たわって約1分間の波形を記録するタイプのものです。まれに起こる不整脈を見るためにはホルター心電図と呼ばれる24時間装着して使うタイプのものや、より長期(約2週間まで)の記録が行える長時間心電図レコーダーがあります。また、運動負荷をかけながら心電図を記録する方法も行われています。

確定的な診断を行うのに有効なのがEPS(電気生理学的検査)です。電極がついたカテーテルという細い管を足の付け根から挿入して心臓まで到達させ、電気刺激を与えて人工的に不整脈を起こしながら心電図をとります。EPSは他の方法で不整脈が特定できない場合に用いられることが多いです。

治療

不整脈のタイプによっては治療を必要としないものがあります。例えば飲酒によって生じる頻脈です。

治療方法の主なものには、薬物(抗不整脈薬、抗凝固薬)、カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)、植込み型除細動動機(ICD)、ペースメーカーのほか、手術治療を行うこともあります。薬物は不整脈のタイプによって使う薬剤が異なります。脈を遅くするもの、不整脈のリズムを規則正しいものに戻すものなどがあります。症状が重篤な場合に用いられます。抗凝固薬は、血を固まりにくくして、血栓ができることを防ぐものです。

カテーテルアブレーションは、心臓にカテーテルを挿入して、不整脈を起こす箇所を焼灼(焼き切る)ことを行う治療法です。問題の部位をなくしてしまうため、根治治療が期待できます。詳しくはこちらの動画を参考にしてください。カテーテルアブレーションが適用できない場合には、ICDやペースメーカーを使用します。手術治療は、身体に負担が大きいため、他の重要な心疾患の手術と合わせて行われる場合が主流です。

参考資料

日本循環器学会 ・日本不整脈心電学会合同ガイドライン:2022 年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン
医療法人社団 公仁会 大和成和病院:心臓の病気あれこれ 病気について 不整脈
医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院:心臓血管病を理解しよう 不整脈